泡坂妻夫『大江戸奇術考』(平凡社新書)

 日本で手品が演芸の一ジャンルとして定着したのは、江戸時代中期の頃らしいが、案外手品の歴史についての本は少ない。一般書としてかなり充実した内容。
 ところで、キリシタン関連の資料を読んでいた時にふと思ったのだが、江戸時代の排耶書に登場するキリシタンは、「天狗」と同一視され、彼らは怪しげな術を使うと広く信じられていた。その「術」の例が「空に浮かぶ」「何もないところから物を出す」というような、宗教と全然カンケーねえだろと言いたくなるようなモノばっかりなのだが、これは安土桃山時代に、日本に入ってきた西洋手品が、誤解された結果じゃないだろうかと思う。