ポン・ジュノ「殺人の追憶」

 舞台挨拶と一緒に観てきた。すぐれたコメディだった前作の「ほえる犬は噛まない」から一転して、実在の連続婦女暴行殺人事件を扱ったサスペンス映画……だという触れ込みだったが、見ようによっては十分コメディで通る。何しろ、主人公である刑事たちの敵は犯人ではなく、自分たちの前近代的な体質そのもので、当時の韓国の政治体制、特に警察機構のダメ具合への皮肉に満ち満ちている。題材の扱い方は、「突入せよ! あさま山荘事件」に近いものを感じた。重喜劇の一種だと思う。