安藤健二『封印作品の謎』(太田出版 ISBN:4872338871)

怪奇大作戦」の「狂鬼人間」や、「ノストラダムスの大予言」など、なんらかの事情で発表が出来なくなった映像作品についてまとめた良著。
 こういうのって封印されたことで逆にムダに評価が高まる気がする。「狂鬼人間」等は俺も見る機会があったのだが、「今も評価されるべき作品」かというと疑問を感じる。刑法39条への問題提起というテーマは面白いし、岸田森の発狂シーンやラストは確かに凄いが、「精神障害者の描写」としては(製作時期を鑑みても)やはりステロタイプや無知の批判を免れないと俺も思う*1。かといって封印がよいことだとは思わない。当時としては先鋭的なテーマを扱っていた以上、こういう齟齬は起こりえたのだし、問題点も含めて作品の一部と考えるべきだ。不特定多数のユーザーが目にする可能性がある再放送は難しいとしても、しかるべき注釈を付けてソフト化することは可能ではないかと思う。
 追記……「怪奇大作戦」のLDボックスの回収騒ぎについて詳しい事情が知りたい方はこちらを是非。非常にためになります。この本のライターさんからも取材を受けられたそうです。

*1:「精神異常者は一生治らない」「日本は精神異常者が野放し」など、登場人物たちはかなり言いたい放題。