シオドア・スタージョン『きみの血を』(ハヤカワ文庫)

 長らく絶版だったスタージョンの異色作。高価すぎて手が届かなかったのだが、ようやく復刊された。一人の若い兵士が恋人に宛てた異様な手紙が検閲に引っかかり、精神科医である主人公が兵士を尋問する。兵士は突然暴れ出して病院に収容され、その過去を探られていく。
 地味な内容だから人を選ぶけど、熱狂的なファンがいるのも分かる。精神科医と同僚がやりとりをしている手紙と、兵士本人の手記の組み合わせによる凝った構成で、ホラーというよりは叙述ミステリの要素を含んだスリラー。「吸血鬼小説」と帯で謳っているが、それは違うんじゃないかと思う。はっきりと謎解きが提示されるわけではないから、うっかり真相を読み落とす人がいるかも。
 個人的には『人間以上』の方が好きだけど。