キム・ジウン「箪笥」(ネタバレ有)

 DVDで。「反則王」「クワイエット・ファミリー」の監督によるホラー。とある姉妹が人里離れた家に帰ってくる。父親は再婚しているが、精神を病んでいるらしい継母と姉妹は反りが合わない。常に疲れきった様子の父親は三人の関係にも無関心。姉妹と継母の緊張が高まるにつれて、姉妹は家の中に自分たち以外の誰かが潜んでいると思うようになる……
 美術やカメラワークは素晴らしい。特に日本の大正建築を思わせるような一軒家のセット(この映画のためだけに建てられたものだそうだ)は細部に至るまで作り込まれている。これを観るだけでも価値があると思う。
 物語の後半でこの家族に隠された「真相」が明かされるんだけど、俺の周囲ではこの部分の評判がかなり悪い。というのも、その「真相」が「精神を病んだ姉娘が不在の継母と自分の役を交互に演じている上、既に死んだ妹を生きていると思いこんでいる」なんだけど、その謎解きに矛盾するシーンが前半のかなりの部分を占めている。例えば、妹娘が部屋に一人でいるとか、継母と姉娘が同時に別の場所にいるとか。この謎解きでカタルシスを得るのはかなり難しいんじゃないだろうか。
 おそらくキム・ジウンが重視しているのはフェアな謎解きではないんだろうけど、結局ドラマよりもセットの屋敷が印象に残るという変わった映画。キャストの中ではこのセットに「合う」容姿の継母役のキム・ジョンアが一番得をしている、と思う。